妻と一緒に府中で鑑賞。雨も降ったり止んだりで初めは乗り気ではなかったけれど、坂元裕二だしな、いま少しは気持ちも明るいしな。今週逃したら来週まで待たせるの申し訳ないしな。といろんな理由から意を決して梅雨空の下家を出た。
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した――。
正直整理がついていないのもある。あまり詳しいことは書けないけれど僕にとって心にものすごく訴えかけるものがある、すぐれた作品であった。あと「(この映画は)予備知識なくみてほしい」とYouTubeのコメント欄にもあるように、ほんとうにその通りだった。少しでも前向きに見る気持ちがあるのであれば、何も入れずに観てください(僕はYouTubeでもネットでも検索さえもしていなかった)。それと、梅雨が続きますが少しでも明るい気分でみてください。映画後に明るい予定は入れないほうがいいです。
映画中盤から幕が降りるときにかけて、僕はある登場人物に向かって「○○さんごめん。ほんとうにごめん。」と思った。おそらくだけど正常な認識と判断ができるひとならば似たようなことを思うに違いない(そうであってほしい)。
エンドロールで坂本龍一の音楽が流された。20代前半であろうか、隣の青年がしゃくりを上げていてそれにもってかれたというのもある。顔もよくみていないのに僕の勝手なイメージで泣かなそうな雰囲気であったのと、多分きっとこの人も同じおもいを抱いているのではないかと不思議なシンパシーを感じてしまった。また反対側の隣にいる身近な存在の妻よりも、変な話であるがまったく知らない他人の方に共鳴した感じがあった。
8月下旬が出産予定日の、子どもを迎える準備の最中に見るにはいささかきつい内容だった。この物語のキャッチコピー「怪物、だーれだ」にもあるように怪物は誰なのか? 子どもたちはなぜ「怪物」と口にするのか? (言葉の意味を知らない、たとえば小説なんかで片言のような表現にする「カイブツ」でも「かいぶつ」でもない、彼らは「怪物」の本質を知っていそうだった)。いったい誰が悪いのか? あるいは誰が悪いかを問うことそのものが正しいのか?
あらゆる謎に包まれ、見せられる物語は幕を閉じる。
https://www.youtube.com/watch?v=8ikfnYT3-pI
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全く関係ない話だけど、映画を見終わり帰りの電車に揺られながら思い出したことがある。小学2年生の時、「かいぶつ」と呼ばれた女の子がいた。彼女は確かにその年齢にして体格が大きく、腕相撲で男子にかんたんに勝つなど力も強かった。朧げな記憶だけれど、当時ポケモンが流行っておりカイリキーという力強いモンスターをやゆして男子が女の子に言っていたようで、それで泣いてしまった。事態を察知したカナ先生が止めに入った。ふだんは温和な先生がめずらしくすごい剣幕で男児を叱っていた。夕暮れの掃除の時間。カーテンが窓から入ってくる風に静かにゆれていた。ゴミ箱を教室へ持って帰ってくるそのタイミングに僕は出くわした。僕はそのことの顛末を実際に見たのではないのにはっきりと覚えている。帰り道で彼女におしえてもらったのだった。