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あらいの小話、

フィクションか何かだと思ってください、

まちの音を聴く

日常 雑感

 

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 なんでこんなことを書くのか自分でもわからないけど、「それがどうした」ってことがたまらなくおもしろい。

 
時折、イヤホンをつけてまちを歩くのが惜しくなる時がある。 信号機のぴーぴー音。すれちがうひとの会話。雨、風のざわめき。鳥たちのなきごえ。たくさんの車が走る音。雑踏に溶け込んだそれらすべては、わたしではないものから発せられる”ただの”音でしかないけれど、それらがわたしのものような、ひどく近いもののように感じられる時がたまにある。
 
それは、自分が一部に溶け込んでいることによって可能になるのであって、イヤホンをつけたりして接触する外界とのかかわりを、一時的にでも断とうという意思を表明するわたしには、可能にしない。
 
「行き交う人々の姿そのものが街を彩らせるアクセサリーだ」と誰かが言っていた気がしたが、まさにそのとおりで。まちの主役は、高々と掲げられた派手な看板でなければ、無駄に延伸させられた線路でもなく、また高層ビルでもない。わたしたち人間だ。工事現場に勤しむおじさんお姉さんも一人としてしっかりとカウントしなければいけない。*1
 
 
けれど、いつもこんなことを考えて歩いているわけではない。ただ目的地に向かってできるだけ、はやく辿りつくように歩いている。ほんのたまに、早歩きをしているときに浮かんでくる。その時に限って、てもとにはペンと紙がない。
 
 
 
上に書いた日常は、ほんのすこしだけいまわたしたちが住んでいる世界から、それとは異なった雰囲気の世界へと引っ張り出してくれる。ほんの、わずか一瞬だけだけど。一瞬でも、わたしにとって非日常と化した風景と意識をしてみる東京の街を歩くのも悪くない。むしろ、愉しい。
 
電車に乗ればみんなうつむいて画面に向かって顔をしかめている。けどきょう乗った電車では、本を読む人の割合が感覚的には多かった気がする。そんな時、画面を眺めている自分は悔しくなる。「どうせ若者だから」「所詮、スマホのゲームだろ」と思われるんじゃないか。
 
とんだ被害妄想だけど、そう言われている気がしてならないので、カバンから引っ張り出す。あいにくSPIの参考書しか入ってなくて頭に来た。とことんながめてやろうじゃないの。と、勝手にむきなっていると、斜め前にいた同じ年くらいの男性が、これまた同じ年くらいの女性の方にまどろみながら傾いていってしまっているではないか。女性は嫌がるかと思いきや、同じくしてまどろんでいたので、気づいていなかったようだった。ふたりはいっしょに北千住で降りて行った。
 
 
帰りの電車でも運好く座ることが出来た。作戦は成功した。今度はゆっくりと読めるだろうと、手には折りたたんだ新聞を携えた。すこし経つと女性が朝日新聞社出版の本を片手にとなりに入ってきた。映った窓ガラスに見える顔はとても眠そうで、本なんてまともに読めやしない。読もうとして、あきらめる。
 
何駅か過ぎるとうるさい大学生が流れるように入ってきた。ひとグループはインカレかなにか大会の移動途中だろう。つくばに行くんだなとおもったら見事的中した。もうひとグループは、上に書いたのと同じ。きているポロシャツが異なるので違う大学なんだろう。あしたには、かれらは戦っているのだろうか。
 
そして、もうひとグループは登山家キャンプかなにかのアウトドアー的なものを終えてきたであろう男女4人組のメンバーだった。これが酷かった。上に書いた団体御一行は、ただ疲れているのかたたかいに備えているのか静かに眠っている。しかし、彼らはちがう。
 
〇〇先輩が~~、いやあそこでベッドにいくのはやばいっしょ!、それな~、こっから帰るのが~、、、、
 
周りは彼らに冷たい目を向けていた。
 
 
彼らのすこし手前に、赤ちゃんを前にかけていながら新聞を読みたそうにしている女性がつっ立っていた。わたしは彼らの一部としてカウントされたらたまったもんじゃないと感じた。女性に「すわってください」と言って譲り、そこからたち去った。
その時、一瞬だけ見えた女性の驚いた顔が、目のうら辺りにまだ張り付いている。
 
 
おしなべてまちの音を聴くということは、そういった「騒音」も含めて受容しなければならないということなんだろう。
 
 
 
 
相方とお金を出し合って買ったこれがたまらなくおもしろい。岸先生、最高です。
 
 atプラス28 (岸政彦 編集協力)

 

 

 

atプラス28 (岸政彦 編集協力)

 

 

 

 

いま彼女は介護補助のアルバイトで留守にしているので、かれこれ3時間から4時間、居座らせてもらっている。部屋から見える外の風景がまだ見慣れない。まだまだ書きたいことはたくさんあるけれど、とりあえずお暇する。
 
 
 
 

*1:少しおこがましいので換言すると、まちで生き生きと過ごすわたしたち。