何を書くか、何を書かないか。

70パーセントはフィクションだと思ってください。

「埼玉に乾杯」で乾杯しながら見つめたい

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振り向くとそこに猫がいた。猫はゆっくりと歩いていて、私を何処かに連れて行こうとした。その先には自動販売機とゴミ捨て場があった。・・・疲れの取れなさに断酒をすると決め込んでから数にち、時間に直すと126時間と少しで私は帰り道、セブンイレブンのホットドッグ頬張りながらキリン一番搾り「埼玉に乾杯」を片手に持っていた。それを呷った。夜風が肌を撫でた。少し寒かったが心地よかった。家に着く頃にはほろ酔い、目の前にやんわりと靄がかかっているような具合だった。大会出張で初めて富士山に登った。五合目に到達するとそこは太陽が近かった。近かったというのは適切ではない。普段よりも日光を近くで受けているような感覚に陥った、というべきだろうか。実際、五合目から下山する時私は雲のなかに溶け込んだ。子どもの頃の淡い幻想は打ち砕かれた一方で、涼しさという意味で現実的な心地よさを実感した。やはりあれは固形ではなく水蒸気だった。ところで世の中には「見ていて不安になるような可愛さ / きれいさ」がある。甘酸っぱくて愛おしくて胸がキューっとなる、みたいな青春ちっくなことは書けない。こないだランニングイベントの告知で、神宮前のオフィスから表参道、原宿、代々木公園をめぐった。六時半の代々木公園では高校生の男女七人がはしゃいでいた。まだ見ちゃダメ!と女子は言い、男子はいいじゃん、もういいじゃんと流した。ベーシック・グレーのスカートは揺れ、白いワイシャツが踊った。楽しそうだった。・・・高価そうな寿司屋の敷地内に野良猫がべったりと寝ていて、こいつは恵まれていると思った。ところがそいつは私の住むマンションの前の道路でもしばしばべったりと寝ていて、私が近づくと、鋭く睨みつけてきた。それは警戒、そのものだった。ゆっくりと起き上がりノロノロと歩き出した。まるで時間が0.25倍速になったようだった。・・・先輩の女性社員を見ていると、なんだか不安にさせられるような気分になり、それでいてきれいで目を奪われる。けさオフィスで、倉庫の鍵を取りに部屋に入ると、朝一番だったのか一人で業務の準備をしていた。そのたった数十秒間私はひどくどぎまぎして、ろくに目を合わせることができなかった。いつも同期とその先輩のことを話していて、〇〇さんはナンバーワン(一番きれい)だねとか、何歳だろう、28とか?いやいやさすがに26じゃない?なんてくだらないことを言っている。実際に30だよと言われればそうだと信じるし、26だと言われてもですよね、と思うだろう。妖しくてきれいでつらい。そんな先輩にけさ「焼けたね?」と言われて、私は心臓が止まりそうになった。もっと言えば、からだの凡ゆる器官やその機能が同時に停止してしまいそうな感覚を抱いた。柄にもなくどもりながら「ええ、よく言われます」と、なんとかして答えた。それに対して先輩は言った。

「悪くないよ。」

こんな人を毎日毎晩どんな距離から見つめても、あるいはどう触れても「お咎めなし」であってしまう配偶者がいることに、憤りを感じざるえない梅雨目前の一日だった。