何を書くか、何を書かないか。

70パーセントはフィクションだと思ってください。

6月2日(日)

 

 

   6月1日(土)15時。集合時間の20分前に原宿門に着いたので時計台の脇に腰掛けて人を待っていた。特にすることがなかったので、青い葉っぱが風に揺れるところ、移動販売車に並ぶ人の様子を見ていた。時を同じくして濃紺のスーツを着た22、23歳と思われる男性2人組が手に紙袋をぶら下げて歩いてきた(ほとんど僕と同じくらいの年齢だと思う)。片方は背広を羽織り、もう片方は真っ白なワイシャツに無地のタイをつけていた。僕は半袖のストライプシャツにカーキの丈の短いパンツ、オレンジのアディダスのシューズ。風があって肌寒く、彼らの格好が適当だなと思った。彼らは土曜日の昼下がり、曇り空の公園をスーツでにこやかに歩いていた。土曜日に仕事しているんだとすぐにわかった。

「ちょっと待ってて」背広がおもむろに立ち上がってまっすぐ歩いて行った。紙袋から手のひらより少し大きいくらいの本を3冊取り出し、片手で広げて持って見せた。説明、相槌、説明。笑顔、説明。眼鏡をかけた小太りの男性は携帯電話とその3冊を交互に見ながら、やや気だるそうに(に見えた)背広の話を聞いた。3分くらいあっただろうか。もう一度顔を上げてその2人に目を向けた時、小太りの男性は顔あたりに持ち上げた右手を揺らした。「結構です、要りません」のサインだろうと思った。濃紺の背広は立ち上がり、15%くらいの笑顔で顎を少し引いて、礼を言って立ち上がった。「ありがとうございました」。また、スタスタとこちら側にやってきてワイシャツに向かって「ダメだったよ」と小さな声で言い、公園の奥地の方へ向かって歩いていった。あまり落ち込んではいない様子だった。

 僕はそのあと男性ランニングコーチと落ち合い、雑誌広告のために公園内で1時間20分取材した。

 

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