私は本を読むペースを拘らない方なので、特に月間何冊と言った風にストイックなノルマは課していません。がんじがらめにしても何もいいことはないと経験的に分かっているからです。それで11月も終わりが見える頃、ふと振り返ってみると今月は結構読んでるな~、と思ったのでその経過や記録を書き残しておきます。
「1Q84 BOOK 1/1Q84 BOOK 2」/村上春樹 →10月中盤から11月上旬にかけて
「空気さなぎ」をめぐる青豆と天吾の物語です。初めは「空気さなぎ」って何?「ふかえり」って何者?17歳の天使っていうから橋本環奈とかで想像していい?みたいな感じでしたがそれはアウト。猛省しました。その他にも「リトル・ピープル」ってなに?「さきがけ/あけぼの」って何?って感じで、こう記しているように登場人物の周りが深い謎に包まれたまま物語が進行します。電車が徐行運転するようにすごくゆっくり、時として滝が流れ落ちるように早くなったりして。
「1Q84 BOOK 3」/村上春樹 →11月中旬
言わずもがな BOOK2の続編です。BOOK3の出現に関する記述を以前しましたので、そのエントリを参考ください。(→『1Q84』という物語への所感 - 勢いあまって)
青豆、天吾に加えて一つの章として牛河が設けられます。評するなら曲者であり厄介者、あるいは疫病神と形容できるこの男がBOOK3ではキー・パーソンとなります。前章で明らかにならなかった事柄が、芋づる式にぼろぼろと明るみになります。それは青豆の章で天吾の過去が明らかになったり、またその反対も然りです。そしていつでもその解明に関与してくるのが牛河という男の存在。小松の行方は、ふかえりは何者なのか最後まで目を離せない一冊です。
「古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)」古市憲寿/→11月初めの週
購入しました。私は古市さんが大好きなんです。うーん、何と言ったらいいんだろう。悩むけど好きです。始まりは、ニッポンのジレンマの元旦SPを観たときから!それでツイッターをチェックしてみるとプロフィール欄の書き出しには「誰の味方でもありません。」という文字が。一目ぼれでした。
さて、大事な中身に関してですが、一言にまとめきれない程ボリューミーに盛り込んであります。日本を代表する12人の「社会学者」に「社会学ってなんですか?」と古市さんが聞いて回ります。「社会学ってなんなの?」って聞かれて濁してばかりいた私にとっては最良の一冊。
「彼らにとっての社会学は何か」を知れるだけでなく、反対に「一般人である私たちにとっての社会学とはなんであろうか?」と、そんな際限のない問答を与えてくれます。また各章の断片には「古市くんにとっての社会学はなに?」といったやりとりも見られます。「答えのない世の中」を生きる私たちは何を頼りに生きればいいのでしょう。「神は死んだ」ではなく「大きな物語」の終焉でもない、諦めるな!現代日本に国籍を有した人が必携すべき指南書。
「深爪式 声に出して読めない53の話」/深爪 →11月中旬
ツイッターで人気を博している「深爪」さん。痛快なまえがきに始まり「深爪なセックス」「深爪な恋愛」「深爪なSNS」…といったように各章タイトルの初めにはすべて「深爪」が付けられています。あまり事情に詳しくないので、なにが深爪でどんな意味があるのかわかりませんが、本書タイトルにあるような「声に出して読めない」話というのは間違いありません。ですから、ここでかいつまんでお話しすることもできません。言葉を巧みに操り、現代日本にふわふわと浮いている「違和感」に異を唱える筆力には感服してしまいます。ちなみに私はこれを読むときは「卒論に行き詰ったとき休憩の合間に」と決めています。卒論の合間に、仕事の合間に「ふふふ」ってなりたい人は手に取ってみてください。後悔はしません!
「編集ガール! (祥伝社文庫)」/五十嵐貴久 →10月最終日
タイトルにあるようにアラサーを迎えるガール(ともいえない?)主人公・久美子が、社長直々、月一回全員提出の企画書を気に入られてしまい、さえない経理事務員から編集者に昇進?!してしまう小説です。異例の異動に激しく狼狽する久美子は事態をどうやって乗り越えるのか。校閲や撮影、ライティング、出版といった業界特有の時間との闘いにどう挑んでいくのか。私としては、出版社の体質を知るためにはいい一冊でしたが、書き方的にはうーんという感じ。村上さんの文章に目を通していると、他の作品が途端に薄く感じられてしまうんですよね…。これも賛否両論あると思いますが「読んでみる価値あり」。働く大人たちのラブコメ小説です。
「青葉繁れる (文春文庫)」/井上ひさし→今日いちにちで読了
一高応援団にインタヴュー調査しに行ったとき、団長に勧められてすぐにポチりました。
あらすじ(後半部分):戦後まもない頃、恋に悩み、権力に抗い、伸びやかに芽吹く高校生たちの青春を生き生きと描く。ユーモアと反骨精神に満ちた青春文学。
以下、ウィキペディアより転載
青葉繁れる城下町・仙台市を舞台に、「東北一の名門校・仙台一高」(現・宮城県仙台第一高校)の落ちこぼれ4人組と、「日本一の名門校・日比谷高校」(現・都立日比谷高校)から仙台一高に転校してきた俊介らが巻き起こす明朗青春劇である。この作品の原作は、井上ひさしの仙台一高在学時代(1950年 - 1953年)の経験をもとにしている。
卒論のテーマである高校生のバンカラ。井上ひさしの筆によってリアルに再現される青春ドラマ。馴染みの深い仙台の街並みを稔、ジャナリ、デコ、ユッヘ、俊介の五人が闊歩する。学帽にある白い三本線は何を示しているのか。後輩たちが一本線ということはその本数は学年を示しているのか。弊衣破帽、高下駄、足駄、かつて学校文化に象徴されたバンカラは、なぜ今衰退しつつあるのかを少しでも解き明かしたかった。240ページ程度なので一日で終わります。山形県出身、「吉里吉里人」で有名な井上ひさしの描く高校生の姿は輝かしい!こんな時代に生まれてみたかった!そして生まれ変われることなら、私は「一高生」になりたい!そんな気持ちにさせられた作品です。
「女のいない男たち」/村上春樹 →これから読む
「いま、地方で生きるということ」/西村佳哲 →これから読む
やっぱ本はいいですよね。