何を書くか、何を書かないか。

70パーセントはフィクションだと思ってください。

『おいハンサム!!』(2022)がおもしろい 吉田鋼太郎・武田玲奈ほか

タイトルのものはNetflixでたまたま見つけたドラマ、とある5人家族の話です。今年の1月からやってたらしい。ドラマの舞台はどうやら東京であるのだけど、劇中で具体的な地名は出てこない。3人姉妹の父役を吉田鋼太郎(源太郎)、母役をMegumi(千鶴)が、娘は年齢が上から順に木南晴夏(由香)、佐久間由依(里香)、武田玲奈(美香)が演じる。理由は特にないけど「このキャストなんかいいなあ」と思ってしまったし、三姉妹の名前に「香」が入っていて、またもやPerfumeかよと心の中で突っ込んだ。あれ、どっかでみたことあるぞこれ。

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「何言ってんだよ!ハンサムで」 源太郎がそれっぽいいいこと(ほんとにいい言葉なんだけど、文脈をよむと滑稽に見える)を言った時に、娘一同がこぼすセリフ

「迷って、選ぶ。迷って、選ぶ。人生はその連続だ。迷っていいんだよ。」
源太郎は小さくない会社の本部長という設定。ある企画が成功しそのお疲れさま会で部下3人(女・男・男)を食事に連れていく。部下は皆揃って20代中盤くらいか。その店には源太郎一行とは関係ないOLがいて、「最近失恋したんだよ。静かにしてよ。ぶつぶつ」と呟くカットが映される。
部下の一人は「お酒飲めないからウーロン茶*1」。料理が来たらみんなスマホでカメラ。来た店について「コスパは〜*2」「この店何で調べたんですか?食べログは見ました?」。「最近の若いやつは」と言われてしようがない様態で、それに対して源太郎は上に私が書いたような「最近の若者は」と思っていても嘆かない。口にしない。彼はこの店をみつけた時のことを訥々と話し出す。ある日仕事に外出でこの近くを通り、迷って迷って、路地に入っていったら、たまたまこの店に行き着いた。そしてランチを食べたら最高だと感じて、以来気に入っている。そして先に書いたことを口にする。
「迷って、選ぶ。迷って、選ぶ。人生はその連続だ。迷っていいんだよ。」
この言葉に突き動かされた失恋OLは立ち上がり、源太郎に「ありがとうございました!」と礼を言って去る。部下は「知り合いですかー?」と聞く。
 
これはいわゆる「あるあるネタ」に終始する類のドラマではない。ちょっとぶっ飛んでる。いや、ちょっとどころではないかもしれない。
面白い物語には、見る者にとって一見して意味のわからない「ルール」であったり登場人物の「世界観」があって、視聴者は「わけわからん」「いやでも、ちょっとわかるような気がする」を往復することによって、もしかすると現実なのか、現実に極限まで近づいた空想(虚構)なのか次第にわからなくなる。結局「共感」という形で、私はそのフィクションをうけいれていく。
エピソードであったり、設定、小道具といったもの一つひとつが、キャラクターの口によって放たれる生の声、つまりセリフによって生き生きとしはじめる。これはまごうことなきギャグドラマ。取り急ぎ私の頭の中で思い浮かぶ福田監督作品が比較参照されたけど、似ているけれど違う。何が違うのか?とりあえず思い浮かんだのは、劇中にギャグで滑ることを演じる役者の「かっこいい・かわいい」でかんたんに清算していないところじゃないかなと思った。真剣な演技がギャグとマジの「ちょうどいい中間」を下支えしているのではなかろうか。思っただけです。
漫画の原作者はここに描かれる小さなエピソードの断片をどこから集めたのか? 集めてこられたのか? 一人の頭の中にこれだけの「わけわからん」「いやでも、ちょっとわかるような気がする」エピソードが詰まっているんだとしたら、もうお手上げです。
 
そして、書いていてはたと気づいた。ちょっとしたクスッと笑える「何か」ってほんとうに大事だなあ、と。中川家とかかまいたちとかサンドウィッチマンとか爆笑する漫才もいいけれど、世の中には笑わせようとするそれだけではなく、おもしろいことが沢山ある。エッセーとかラジオとかドラマとか、この頃色々いいものに囲まれているためかそれなりに楽しいのです。そのことを思い出して、何か文章にしておきたくて、上のようなことを書いているんだろう、とふと思った。
 
 
 
追記.
昨晩、同じくネトフリで『最強のふたり』をみて、その後お決まりの(?)YouTubeで予告編を見返すのをした。レコメンドされたものを適当にみていたらひろゆきが上記作品主演のオマール・シーについて何らか言及している動画が出てきた。そこで「近年のフランス作品、オマール・シーが出ているのにハズレなし」と言っていて、そのいっぽうで私の中では吉田鋼太郎も外れないよなあと思った。あの腹から声が出ている感じ、それが例えどんなセリフであっても面白いんです。私は特にMOZUに中神を推奨したい。
 
 

*1:まあこれはそう言う人がいてもいいでしょう

*2:連れてこられてコスパと言うな!と源太郎に叱られる