社会人1年目は入社前の3月から12月まで、JR埼京線・北戸田駅が最寄りのところに住んでいた*1。新宿方面に一つ隣の戸田駅近くのショッピングモールに大きい書店があって(今もあるのかな?)、たまに仕事帰りに立ち寄った。書店併設のカフェのスペースも広くて、そこで本を読んで21時くらいになったら仕方なく帰るみたいなことを何回かしたことがある。その書店で、2回ほど購入を見送って結局買った本が以下で引用したもので、雑誌編集部の時はページをめくる手が全く進まなかったのだけど、最近はよく持ち歩いている。3度目にして買って手に入れた自分を褒めたい。特に今日印象に残ったところ。
ブランドマネジメントへの関心は90年代の世界的な現象であったが、日本企業の多くは長い間ブランドに関心をもつことではなかった。
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青木幸弘(学習院大学教授)と恩蔵直人(早稲田大学教授)のアンケート調査報告書「日本企業のブランドマネジメント(日経産業消費研究所 2001年)によれば、アンケートに回答した日本の製造業一九一社のうち五九・六パーセントがブランドマネジメントを行うための組織やスタッフを持っている。また、ブランドを扱う専門の部署を持っていると回答した企業は二五・一パーセントであった。」
日本企業もブランドに対して急速に関心をもちはじめていることがうかがえるが、それはごく近年のことにすぎない。(p12-13)
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80年代の終わりになって、米国ではブランドへの関心が急速に高まった・・・・(中略)・・・例えば、ネスレ社*2は「ブイトーニ」、「マッキントッシュ」、「ペリエ」などを買収したのは80年代の後半である。・・・・(中略)・・・・
➡︎特に注目したいのは次から、
強いブランドを持った企業を買収すれば長期的に安定した売り上げが見込めるし、強いブランドを一から立ち上げるには時間と費用がかかりすぎる。彼らはブランドを買うことで時間を買ったとも言える。(p14)
田中洋『企業を高めるブランド戦略』(講談社現代新書1624)
話は変わるけどこないだ見た「50日間で顔が変わるか」という趣旨の正月番組が面白かった。マツコさんと男性芸人が司会を務める特別番組です。その番組の企画の一つ「20代後半の女性にエルメスのバーキンを持たせると、どうなるか」実験について少しアウトプットしておきます。
ブランド品に疎そうな(あまり興味がない)*3女性がとても高級なバッグを持つことで、女性がそのモノに見合う化粧や格好を変化させ、見かけ(特に顔)は変化するのか? が、企画のポイントだと思われる。なぜ女性がブランドによって変貌する対象だという仮説が成り立つのか・・・?は、ここではさておいて。
結論からいうと、変化しました。髪型に気を使うようになった。彼女自身が化粧ができない体質であることを明かし、それを克服するために上京して美容の相談もできるクリニックに通った。そしてアイラインをひけるようになった*4。そして何より、表情が明るくなった。もちろんアイラインがひけること、化粧することが正しいことやいいことという訳ではないです。
車を使わないと職場に通えない松本市の実家に暮らす28歳女性はバーキンの価値を知らなくて、かろうじて「エルメス=すごいもの」だと思っているようだった。実験の1週間くらいが経過するころにマツコさんが「これが200万円を下回るくらいの値段がするって知らないのかしら?」と発言し、その少し後に女性が自分が今持たされているバッグと照合するそれをネットで探して見つけた。真の値段を見たであろう瞬間に顔がひきつり、そのシーンに出演者2人、スタッフ、視聴者である我々は笑わされる。彼女はその日のデイリーコメントでは、「想像していたより5倍も高かったよ、びっくり!」と述べていた。値段を知るとさらに女性は自分に自信がついたためなのか?、行動が積極的になった。彼女のいうところの「コンプレックスを克服する」もその後の行動の一つです。
「行動が積極的になる」とか「自分に自信を持つこと」が絶対にいいことではないし、もちろん「そうであるべきだ、と世の中全体が啓蒙する雰囲気」はもってのほかだと思う。この番組を見て僕は、はたして「ブランド」とは一体何だろうかと考えさせられた。
その企画が始まった時「化粧が薄いわね〜」とマツコはコメントしていたが、彼女のいう「コンプレックス」を克服しようとする場面を経て、「彼女も本来は化粧がしたかったのだ」というメッセージが視聴者に伝わった。TVもすごいな、と思わされた。何がいいってわけではないけれど、エンターテイメントとして享受する以上、面白いなと深く感心しました。すみません考察まではできませんが、一つのエピソードとして置いておきます。思い出したときに考えます。