高校生まで育った土地の最寄駅の目の前に、広大なビール工場がある。「サッポロビール園」といい、そこにはビオトープという広場がある。小学生の頃、理科の授業で生物観察のために訪ねたことがあった。そこまでいい思い出はない。
入っていた少年野球チームの懇親会でビール園に行き、その会の終わり際に園のスタッフからビールキャラメルをもらった。どんな流れだったかわからないけど、それを素直に受け取って食べた。これがとんでもなく不味かった。キャラメルとも言えない、ただ苦いその形だけはキャラメルのお菓子に対し、誰が好き好んでお金を出すだろう? と12歳ながらに思った。あらゆる人間をビールを好きにさせるため? もちろんそんな訳はないだろうけど、生産して世に出していく必然性があまりにも分からなかった。僕にとってはビールは嫌いという印象まで作られた。
それから10年と少し経ち、僕はビールしか飲まない大人になった。ジョッキに注がれる生ビールよりも瓶ビールを好み、たまにクラフトビールを飲む。ビールの種類もソムリエと言わずとも、ある程度は飲み分けられるようになった。不思議だなと思った。年齢を重ねるにつれて趣味嗜好は変わるとまでは言えないけど、今でもふとあのビールキャラメルを思い出す。まだあの不思議な四角形のお菓子は売っているのだろうか?