何を書くか、何を書かないか。

70パーセントはフィクションだと思ってください。

「言葉が溢れる」

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薬局には清野菜名がいつものようにいた。あまりにも当たり前のようにいるから、周りに置かれた薬やらマスクやらの商品が「そこにはそぐわない何か」のように見えた。彼女はマスクをしていて、声がなんだか疲れているようだった。僕は買ったものを受け取って、悶々とした気持ちで店を出た。定食屋のおっちゃんは俗に言う「言葉が溢れて仕方がない」人だった。上原が打たれるなり、やっぱり俺の言った通りだ。長打なんて俺には見えてた。由伸も同情だけじゃやらねえよなあ。歳だけどプロはプロで金もらっている限りヤんなきゃいけねえんだ!と言った。おっちゃんは阪神対広島戦で阪神が逆転し、CMに入った途端巨人対横浜戦にチャンネルを変えた。さっきは負けてたのにどうした巨人。上原か、おお上原か。と言っていたのに、上原が打たれるなり感情の落差はあまりにも大きかった。途中で、おばさんが家とつながっているドアを開けて店の様子を覗いた。「あら、いたの」みたいな顔で私を見た。おっちゃんはいつもCS放送で野球中継を「回し観」ており、その都度辛口コメントを毎晩のようにしているのだろう。多分今日はあまりにも饒舌になったんだと思う。そして多分それを奥さんは聞いてくれない。おっちゃんは不満に思っていて、仕方なく店を開けながらTV相手にしゃべり倒し、21時頃には閉める。僕は餃子定食を平らげた後10分くらいおっちゃんの話聞かされた。まあ悪い気分ではなかった。店を出たときいてもたってもいられない気分であることに気づいた。急いで家に帰り、その店のレシートに電話番号と名前とフリガナを書いた。それを握りしめて行ったら今度は彼女がいなかった。