何を書くか、何を書かないか。

70パーセントはフィクションだと思ってください。

成田 凌の表情

 

◆僕の目の前に豚の生姜焼き定食を出されてから「俺にはそんな食欲なかったんだ」と思った。しばらく皿の配置を動かしながら、どれから手をつければいいか考えていた。でも味はやっぱり美味しくて、ちょっとだけ生きている感じがした。 先日、以前まで付き合っていた彼女からある知らせを受けて、床が突然抜けてしまうような感覚に陥った。まるで生きた心地がしなくて、今でもこうやって書いていることの意味を見出せないまま、キーをゆっくりと押している。でも書かずにはいられなかった。    ◆ここに書いてしまうことについて悪いとは思うけど、いつかは時間によって解決されこれらの日々に懐かしく笑える日が来るとは思うけど、でもやっぱり今が辛いことには変わりなかった。 何が悲しいって、彼女とのこの先の未来を想像できないことだ。その先の未来は私ではない別の誰かによって一緒に作られる。彼女がどんな顔をして、どんな仕草で、どんな言葉で話すのか、あるいは相手を見るのか。考えるだけで胸が張り裂けそうになった。実際に、張り裂けてしまっている。 ◆酒屋で買ったぬるいビールを1缶飲んでしまうと僕は髪を切りたい衝動に駆られた。予約をし、用を足し、そこに向かった。僕は比較的笑顔で話した。久しぶりに人と話した感じがした。お兄さんは優しくて、以前被っていた帽子を取っていた。髪が伸びてきたんすよ、とにやにやして言った。とても似合ってます、と答えた。美容室を出た時に僕はとにかく誰かと話したかったんだ、と気づいた。 雑誌の中の成田凌は僕にに冷たいまなざしを向けていた。クールな表情は僕の心をまるで透かすように読んでいるようだった。この頃よく見かけるこの俳優を僕は割と気に入っていた。彼ならば今のような状況をどのような表情で乗り越えるのだろう?