「僕」と「私」と「わたし」の記録

87パーセントはフィクションです

ワイン

 汚れたワイシャツを着続けるというのはとても苦痛なことなんだと気づいた。タイヤの跡、ワインのしみ、皮脂汚れ。どれもこれもどこでつけたのか、よく覚えていない。

 

 いいや、ワインだけは覚えている。先月、専務の歓迎会で、上司にあけろと命ぜられ、私は足を使い、全身でコルクを引き抜いた。一生懸命に引き抜いた。あたりには「スポっ」といういい音が響き、周りのものは私を見た。見るな、と私は思った。コルクは瓶の口から抜け、それに付いたしずくは私の左手くるぶしめがけて飛んできた。それを見た上司は私におとなの勲章ね、と言った。

 

   私はワインをしこたま飲んだが、味なんか覚えていなかった。辛いとか、甘いとかいう立場でも年齢でもない。私はただ、それを機械的に流し込んだ。ただその事実だけが残るのである。

 

 どうせ会社のお金だ。私が払うわけではない。払うのはこのからだと、時間というお金にも代えがたい大切な資本だ、私は思った。