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夢における色と顔に関する考察

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何種類かの夢を見た。あまり居心地はよくなくて、どちらかといえば気分が悪くなるようなものだった。ひとつは見知らぬ女子高生と駐車場を歩き回るものだった。彼女は徐に私の方を向き、あまり聞こえないような音量で電話番号を読み上げた。私はメモする暇もなく、たぶん自分から聞いたのだろうけど、おわりの4桁がききとれなかった。

080-9316-.....あとの4桁はどんな数字だったのだろうか。今どきの女子高生にしてはスカートは長くて見事な藍色に染まっていた。上半身は鮮やかな青色のパーカーを身につけていた。そういう感じがした。夢に色はあるのか、ここ数日考えているけれど良くわからない。後輩がこの飴玉の色が変化します。といって人差し指と親指でつかんだ紫色の飴玉が見事に鮮やかな緑色に変化する過程をこの目で見ていたし、あくまで私は夢には色があるように知覚している。目当ての車を見つけられなくて太いコンクリートの柱にもたれかかっていると、彼女の彼氏らしき少年がノコノコとやってきて私を罵倒しはじめた。何語を話しているのかわからなかった。そうして次の瞬間には私の胸ぐらを掴み、顔に唾をかけてきた。その直後、私は彼のバックルを握り左側に投げるようにして倒した。思ったより簡単に彼は浮いて驚いた。軽々しかった。彼は私に殴りかかろうとしていて、彼女はそれを止めようとしなかった。彼の髪を掴んでやろうとおもったが彼は坊主だった。仕方ないからとんがった襟首をつかみ、目と目鼻と鼻口と口が数センチの近さになるまで引っ張り上げ、彼はその間背伸びをしていたように思える。そんなに近かったのに彼の顔があまり思い出せない。私の夢には顔がない。女には顔が7割あるが、男はこれでもかというくらい顔を持たない。そうして彼はまた唾をかけると思ったが、思ったより怯んでいて何もしてこなかった。手を離すとドサっと床に落ちて正座を崩した状態に座り込んだ。どうしてか私は激怒していて彼の胸に思いっきり膝を入れた。ドスンという鈍い音がし、彼のうめき声は駐車場内によく響いた。その状況をよくいえば、彼から逃げる彼女を守っていたのかもしれなくて悪く言えば彼から彼女を無秩序に奪ったのかもしれない。どちらにせよどうでもいいことだった。そこら辺の私はラディカリストなのかもしれない。

しばらくすると現実世界の彼女が私たちの元にやってきて(やはり彼女は怒っていたが)私は彼女の指示にきちんと従い、グレイの軽に乗り込んだ。後部座席で女子高生は泣いていた。どうしたの?と聞くと彼女は首を振った。私はよくわからない感情になった。運転するホンモノの彼女の後頭部を見るのは、現実世界で一番大きな喧嘩をしたあの日いらい二度目だと思った。どこまでが深層心理的なもので、どこからが現実世界へ投影されうるメタファーなのかまるで区別がつかないが、どれもこれも繋がっていると思えば多少は温かく受け入れることができた。

 

カーテンを開けるとそこには裸の女性が3人いてこちらを見て笑っていた。その一人は良く見覚えのある顔だった。すると後ろの方から男たちの声がして、しまったと思った。おそらくはめられたのだ。集団暴行とはいえないやわらかさで殴られたり蹴られたりしたが、彼らはなぜか順序を守っていて同時に攻撃してくるようなことはなかった。RPGのような世界の秩序を体現していた。それをいいことに散々思う存分殴られたり蹴られたりした私は先に少年を相手した時のように彼らに立ち向かった。情けないほどにどいつもこいつも弱かった。どうせ夢なのだから思いっきりやられたいような気分がした。そしてその途端、これが夢らしいなと思った。先にもいったが彼らにはおしなべて顔はなく、しかし茶色や金髪に染められた髪は鮮やかに輝くのである。深緑系のカーキパンツごしに臀部を相当強く蹴りあげたところで、私は高速バスの運転手になっていることに気づいた。目的地を通り過ぎています、折り返してください。という無機質なアナウンスに戸惑いながらも、高速道路をひた走り続けていた。「モクテキチヲトオリスギテイマス、オリカエシテクダサイ。」するとよく汗をかいた女子の先輩がよこにやってきて、そのサービスエリアに入ろうと言った。私は従った。しっかりとハンドルを握り思いブレーキを踏んで大きな車体をスライドさせた。

 

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私は今日、本当は夢のことを書きたかったわけではなかった。夢のことをかけばきわめて創作的な作業ができるが、それでいて気が進まないのは、本当に現実と夢とが区別がつかなくなってしまうからだ。巷でよくうわさされる夢日記は本当に恐ろしいのだ。それで本来は、たとえば山手線にのって一周グルリと回ったところではじめに乗った場所から一つでも二つでも近いところに降りることの楽しさについて考えたかったのだった。安価でさまざまな流れゆく風景を眺めたり人々を観察できたりするメリットがある。折り返し路線において行うのも安く済んで楽しいかもわからない。もちろん実際にやったことはない。

とはいえ、本当はよくないのかもしれない。というかよくない。けれども想像することはできる。まるで夢と一緒だ。

 

 

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着ぐるみのアルバイト先で中途入社する同学年の青年が、普通のノートよりも一回り大きいノートの表紙に「能力向上ノート」と題して細かなメモを取っていた。かれは入って1週間も満たず上司(所長)の愚痴を言っていた。質問を聞いてくれないとか挨拶で怒られたとか。だらだら愚痴を話すものだから頭にきて、そしたらなんのためにノートをとってるんですか。いつでも質問できるように書き溜めておけばいいじゃないですか。アイデアを書くのはタダじゃないですか。と少し強く言った。かれの口癖は(展示場内の)家を見るのはタダですよ、だったからそれに乗せて言ったつもりだったのだ。しかしそのタダだって適切ではないのだ。タダで家を観たり悪く言えば雨風よけに来る客にお茶を出しても仕方がない。こちらだって利益を生み出すためにやっているわけだから。その一言にかれは思い直したようにスラスラと、うちに秘めたる思いを綴るのに没頭しはじめた。かれの雑談は、私がいうのもなんなんだがとんでもなく、恐ろしいほどにつまらなかった

 

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