何を書くか、何を書かないか。

70パーセントはフィクションだと思ってください。

観衆とテレビの前では

 よく読ませていただいているブログに『紅白はBGM』というのがあって「あぁ~」と思わされた。年末へ向けてテレビ局は、一年間の総集編・総まとめを公共の電波に乗せる。私はこの歳で、どの局の特番がどの局のものなのか、明確な区別がつかなくなった。ものすごい没個性だと思った。

とはいえ、紅白歌合戦や、年始に頻出する(大して面白くもない)お笑い番組、特番たちは、様々な人の家のテレビの前ではおしなべてBGMと化するらしい。これは、静かすぎるより、少しくらいの雑音があったほうが落ち着くでしょう、という人間の生理的機能に依っていると考えられる。*1

 

 私は、卒論の経過を多くのお笑い動画と共に過ごしてきた。M‐1優勝の銀シャリの存在は以前から知っていたが、ここまで面白いとは知らなかった。M‐1における銀シャリの優勝は(順序やルール的にそぐわないけれども)予選のネタで決まっていたように思える。お笑い版 "日本選手権”は、気合がはいるだろうし、それだけクオリティや精度も高い。その一方で、そういったランクよりも下位に位置づけられる番組や、イベント中継のネタは、見るに堪えない内容が多い。

大体は(一度出した)ネタのリユースや、時間の都合上によるショート・バージョンが提供される。それに関して、私は”お笑い芸人”の方には、矜持を持ってやってほしいと思ったことがある。というか、この年越しを機に、より強く思った。また、流行に乗せられていると思いながら後輩に読まされた又吉先生の『火花』を思い出して、より強く感じることだった。

ただの芸人およびタレントなら、手に身に一つでも芸を携えて、観衆の前で披露すればよい。だが、お笑い芸人はそう名乗る以上、見る人(観衆)に”お笑い”をもたらさなければならない。自分がこなすネタに、自分一人だけが思い出し笑いしてしまうようなネタは、お笑い芸人のネタとは言えないと思うのだ。

といいつつも私は、漫才最中の芸人たちが、自分たちの漫才に対し仕方なしに笑ってしまうところは、本当に楽しそうだから好きだ。それは、学生漫才をやっているものによると、"誘い笑い"と言うテクニックらしい。どうでもいいことを一つ学んだ。

 

 私の「寝正月」は、食っちゃ寝でグータラ過ごす正月ではなかった。体内機能の不調のため"やむなく"寝ていなければいけなかった正月のことを言い、喉と鼻はやられ、せっかくのビールの味も香りもパー✋✋✋だった。寝込んで新年を迎えるというのは、恐らく過去にない。*2

 

   画面に映るほとんどが、毎年恒例企画のテンプレみたいなものだったり、あるいは、過去に盛り上がった企画を踏襲したパロディのようなものだから、真剣に視るに値しない。残念なことに、テレビ・放送業界は、日常の随所ではおもしろく手の込んだ演出をするのに、年末など特別行事的なイベントでは、まったくと言っていいほどその才覚を発揮しない。あれほどまで、つつがない日常の大切さを教えてくれたのは、『暮しの手帖』で親しみのある「とと姉ちゃん」だというのに。そんなことをぶつぶつ言いながら、思いながら、年の瀬を、さきの紅白歌合戦を楽しんでいたのは、何を隠そう私である。

 

 今回の正月は、家族に先に実家に帰ってもらい、祖父母の家からは一日遅れで戻った。いままで1月5日あたりから部の活動が始まるから、祖父母の家であまりウカウカして居られなかった。が、しかしそれも考えなくてよくなった私は、家族を先に返し、祖父母と3人でテーブルを3度囲んだ。いままでにない多幸感に包まれたひと時だった。祖父は、先週に、銀行ATMで倒れた。(どんな強運持ちか知らないが)近くの病院務める看護婦が散歩がてらに外に出ていたら、たまたま倒れる祖父を見かけ、年の瀬に一命を取り留めた。それが車の運転中だったら、と考えると鳥肌まとまらないが、それはそれで別の話だろう。家族はよくその祖父に説教じみたお願いをしたが、それはお門違いだと思う。なぜなら、本人の身体のことは本人が一番知っているはずだから。それについて、もし~ならば、みたいな説教的懇願をしても、いまさら意味がないし、キリがない。そのお願いによって病気のリスクは低下するかといえばそうではない。ストレスによってより凄惨な事故を招くことを勘案したほうが建設的だと思う。

なるべく笑顔でいてほしいと思って、私は祖父母のそばにいようと、一人残った。残ったと言うよりも、特別なことではなくいっしょにただ過ごそうとしたという感覚だ。さきに挙げたお笑い番組はつまらなかったが、精鋭に数えられる白髪の落語家のお囃子には祖父母ともども笑わされた。そのタイトルは「午後の保健室」といったが、内容を説明するにはどうにもこうにも難しい。話すことを書くというのは、とても難しい。それが落語家による囃子というならなおさらのことである。

*1:と言いつつ、特にBGMになりやすいのは、箱根駅伝

*2:正確に言うと、紅白歌合戦を見終わり、年越しそばを準備、実食し、片付けた時点で0:10。そのあたりで怪しいと思い、一足先に布団に入った