大学生の透は恋の極みにいた。年上の詩史と過ごす甘くゆるやかなひと時、世界はみちたりていた。恋はするものじゃなく、落ちるものだ。透はそれを詩史に教わった。 ・・・ 『東京タワー』あらすじより抜粋
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誰でもそうかもしれないけれど、自分はあらすじをキチンと吟味する方。あらすじに目を通した後、初めの文の書き出しを読み、いろいろ照らし合わせていって、想像していけるか、この世界に入っていけるかを「確認」する。大体、話題性とかファーストインパクトによるけれど、そうでもなかったりする自分の知らない本や物語は、自分から見つけ出したいという気持ちが強い。本をなんでもかんでも「カートに入れる」作業をできる分際ではないので、それもまた継続している理由として大きいかもしれない。インターネットでも結構調べたりする方だけど、自分が買って読みワイワイと騒ぎ、さぁアウトプットしようかと思ったら、案外話題の本だったというケースも多くある。有川浩さんの作品なんかはそうで、てっきり自分で見つけた感が結構あったんだけど全然違っていた。ただ、自分が無知なだけだった。それくらい知られている作品は息も長いし、誰もが共感できたりするので、嬉しいっちゃあ嬉しいこと。
- 作者: 有川浩
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/01/23
- メディア: 文庫
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本の趣味が合うことや話の馬が合うことって、すでに僕らから発している一次的な情報が成立していないわけで、大きく見て「社会の構造」にスッポリと取り込まれていることが多い。でも、そんなことを考えずに生きていれば、楽しく幸せに「生きれるであろう」ということも分かっている。だから社会学を学んでいると、時に強く寂しいような感情を抱く。また、いろんな面倒くさいことを考えずに生きていれば、日常的に良くも悪くも自分の身に降りかかること、起きることの殆どを「偶然」で片づけることができる。誰とどこで会うとか、話をするとかそこに完璧なシナリオはないわけで、あったらあったで気持ちがよくない。プランとは別にして、出来すぎたシナリオはあまり人を愉快にはさせないと思う。そうこうして、その「偶然」性はどこかハッピーな要素を多分に含んでいると思うのだけど、そのハッピーさとは、どこからやってくるものなんだろう。どこからやってきて、どこへ収められるのだろう。
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何かを好きだと思う感情も、気持ちも、どこからやってきてどこへ「消えて」いくのだろう。その「好き」は偶然なものか、はたまた必然なものか、およそ1年前、2年次の必修になっている「哲学通論」の講義をふと思い出す。訳も分からず「再帰的近代」や、「九鬼周三」、ハイデガーの「存在と時間」、「ニヒリズム」や「宿命論」なんかという言葉を耳していた。概ね、テーマは「偶然と必然」についてだった。一見若そうなのに、頭の毛が薄くなっている先生は、皆からの評判はあまりよくなかったけれど、少なくとも僕は好きだった。少し言葉は悪いけど、無為とも思えるその時間に、答えの出せない答えを出すためにひたすら時間をかける。押し付けずに説いてくる。哲学は学ぶべきだという熱い何かを僕は受け取った。少しだけ、もっとまじめに話を聞いとけばよかったなって思う。いつも後悔するばかり。
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当分会っていない「声」と「文字」だけをうけとっている人を想うことは、とてもつらい。何から何まで、「背景」ばかり気にしていたら物事は進まないと思っている。でもそれは、あくまで、僕からの目線であって、向こうもそうみているとは限らない。。