何を書くか、何を書かないか。

70パーセントはフィクションだと思ってください。

じゅんさいの吸物

緑のキャラクターがほんとすき。

 

「そりゃ大変だったわよ」と緑はため息をつきながらいった。「なにしろ料理なんてものにまるで理解も関心もない一家でしょ。きちんとした包丁とか鍋とか買いたいって言ってもお金なんか出してくれないのよ。今ので十分だっていうの。冗談じゃないわよ。あんなペラペラな包丁で魚なんておろせるものですか。でもそう言うとね、魚なんかおろさなくていいって言われるの。だから仕方ないわよ。せっせとおこづかいためて出刃包丁とか鍋とかザルとか買ったの。ねえ信じられる?十五か十六の女の子が一生懸命爪に火を灯すようにお金ためてザルやら砥石やら天ぷら鍋買ってるなんて。まわりの友だちはたっぷりおこづかいもらって素敵なドレスやら靴やら買ってるっていうのによ。可哀そうだと思うでしょ?」
僕はじゅんさいの吸物をすすりながら肯いた。

ノルウェイの森 上 143-144