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『シューカツ!』② ―人との 距離感

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 タオルの乾きをよくするための方法として、洗いたてものを30秒くらいプロペラのように振りまわしてから干すとよい、とどこかで聞いてから、なるべく毎回するようにしている。柔軟剤がしっかりと染み込んでいると、これによって乾きがよくなるだけでなく、そこらへんにいいにおいが充満することもある。

 

 大学生活がもう終わろうとしている。

 

 わたしにとっての大学生活は、一人でいることが多かった。それは、本という対話する相手がいたためでもあったが、単純に人づきあいがうまくないためでもある。本とむきあってさえいれば、一人で居たってかまわない。と思い、深くふけった時期があったその反動だったのだろう。ある人からは社交的で、どんな人とも苦がなくコミュニケーションをとることができるよね、と思われた。自分自身もそうだと思って疑わず、そう公言してきた。それが就職活動では裏目に出た。

 

 1人暮らしは、実質、誰からの制限を受けることがなく本当にラクだ。しかし、わたしたち競技部部員は競技部部員である以上、ある程度生活を制限される。グラウンドに出たとき、皆とどう接したらいいかわからなくなったり、知らないあいだに自分が不利な立場にたあされておりいきなり空気的リンチに遭うじゃないかという、恐怖感や圧迫感に襲われ、時に閉塞感を伴った。それは、1人暮らしそのものにおいて、自分の行動が制限されないものと理解しはじめたころに起こった。そして、どこかでこらえ、我慢していた部分が噴きだしたとき、対応できなくなったとき、極力わたしは異性と本を頼りにした。あの時のわたしは本当に苦しかった。過去なので、どうとでも言えるが。

 

 そんな状態でも構わず、話しかけてくれる人がいる。その一方で、話してくれなくなる人がいる。対極の人間にはさまれて多くを過ごした。はさまれているというのは、自己中心的な感覚で、相手にとっては知ったこっちゃないこと。そんなことを理解できた時にはすこし疲れていた。人はいろんな仮面を何重にもかぶって生きているんだ、という感じ。*1ひとの急なやさしさにふれると、涙がほろほろと出てくるんだと体感したとき、細かなメカニズムはどうであれ、これを人は「年をとった~」と捉えたがるのもわからなくなかった。これは本当にひどい時で、他だと、やさしい言葉とかおさそいの言葉をもらう最中、ことばが耳にはいってなかったりすることもある。悪い意味ではなく「コノ人ハ、何ヲ言ッテイルンダ・・・」みたいな。いまだにあの構造としくみは分からない。

 

 なりふり構わず話してくれる人だって、もしかしたら装っているだけなのかもしれない、と不信になる時があった。そんな時わたしは必ずと言っていいほど寝ていた。というのも、わたしの信条のなかに「つかれていたりイライラしているときのほとんどは眠い時」というのがあって、寝ればだいたいは解決する。親しい友人に言ってしまったひとことや、一瞬しかないチャンスで教授やコーチに伝えそびれてしまったことなどが数え切れないほどあった。「くよくよしていても仕方ない、頑張ろう‼」という精神論はさも当てにならないので、わたしは目を閉じるようにしている。

 

 1人暮らしという特性上、よほどのことがない限り睡眠を妨害されることはない。読みたい時に読みたい本を手に取り、眠りたい時に眠りにつけるというのは、学生生活のうちに収められる功績の程度がどうであれ、これだけは何にも代えがたいこの上ないしあわせだった。

 

 人との距離感がわからなくなったわたしは「以前のようなわたし」はなるべく捨てるようにして、人と出会うように心がけた。いつでも飲みに行ける友人その他は多くなくとも*2、あの話を聞きに行きたいな、頼んでもいいかな?と思える人がとんでもなく増えた。宮崎駿監督がほんとに言ったのかは知らないが、面倒くさいことに関して「世の中の大事なことって、たいてい面倒くさいんだよ」と言ったらしい。ほかの人が面倒くさがりそうで、わたしにとって大事なことと言えば「初対面というのを厭わず、なるべく誰とでも会って話してみる」こと。

 

 いまでも就職活動を続けているわたしは、もしかすると社会の中では大きなおくれを取っているひとりの人間かもしれない。高校の恩師が言う通り、わたしはある程度、ほかの人よりも時間がかかってしまう。しかし、それをやっと4年になって肯定的にとらえられるようになった。これも、昼寝をしてから書いた。

 

 

前回のもの

masa1751.hatenablog.com

*1:すこし寄せて言うと、「多元的リアリティ」という

*2:といっても、いつでも飲みに行ける友人その他に関しても困ってはいないのだが