何を書くか、何を書かないか。

70パーセントはフィクションだと思ってください。

よる

 
物事を断片的に並べていく。その目にしているものはすでに断片的なものだから、それらをつなげ組み合わせてみる。不自然さを孕んだこの一連の流れは、結局のところ95%が工作物だ。
 
 
 
僕は夢を見た。
 
 
そこは、学園祭の真っ只中で、体育館と思しき箱の中に人が溢れんばかりにいた。しかし、その学校の風景そのものに見覚えはない。
 
その箱から外へ出た時、急に目の前に現れ出た彼女は、僕に縋り付いた。一緒に来てちょうだいと言い、強く手を引っ張った。
 
 
どこへ行くの、とも僕に言わせず彼女の後を追う。よく見ると彼女は両脚とも義足でいて、しかし、それを思わせぬような健全的でキビキビとした足取りを見せた。
 
 
 
長い街路樹を抜け、大きな道路に出たと思ったら、もうそこはいつの間にか夜だった。しかし、星も、月も見えない。雑居ビルが道沿いに並んでいて、ガソリンスタンドが遠方に見える。
 
 
 
暗い小径に入り、駐車場に停めてある車の陰に、身を潜めるようにして彼女はしゃがみこむ。またさっきと同じようにして僕の手を引っ張る。
 
 
 
一呼吸置いて、私を見て、と彼女は言う。なので僕は彼女の眼を見る。僕よりも頭ひとつ分小さい彼女は、しゃがむと尚更ちいさく見え、それはまるで小動物を世話しているような気分を僕に味あわせた。
 
 
脚は大丈夫なの、と聞いても彼女は答えなかった。ただ、そのガラス玉のような綺麗な眼を見つめていると吸い込まれてしまいそうになった。その顔をまじまじと見てみる。ホクロやそばかすやニキビも見当たらない。髪は細長い線を描き、肩まで垂れていた。
 
 
 
彼女は、何か言いたげな表情を浮かべているが、その小さな口から発せられることはなかった。だけど、言葉にならない言葉が伝わってくるようだった。僕はただ意味もなくえんえんと、彼女の言葉にならない言葉に対して頷いていた。