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おおさか 1

 

 きのうは一日かけて大阪市内をぐるっと散策した。最後に、梅田からひょいと抜け出して、阪急線に乗り、宝塚まで足を運んだ。有川浩の「阪急電車」を読んでから、この車両、そして路線、また路線から見える景色を、この目で直に見たかった。なので、この機会を逃すまいと思った。やっと遂行することができて、いまはホッと安心している。思った以上に、作品中の世界観がリアリティある情景として浮かんできて驚いた。そこは、もっと喧噪の多いものかと思っていたけれど、乗客のよい上品さが上回っていて、なんかこう、うまく言い表せないけれど、より好きになった。

 

 

 僕の泊まったカプセルホテルでは、10時チェックアウトが原則となっているので、9時半に鳴り響く館内放送で「オキャクサマ」は全員もれなく叩き起こされる。9時に起き、のそのそと支度していたらいろんな人が「カプセル」なるものから出てきて一斉に支度をし始める。寝起きの客で一杯になった館内の廊下は、あっという間に慌しくなった。もうすこしはやくから支度を始めればよかったと強く後悔した。シャワーを浴びる権利を勝ち取り、上がるとドライヤーで髪を乾かし歯を磨いて、足早にそこを出ようと急いだ。

 

 

 残念なことに、カプセルホテルから荷物の宅配は出来ないというので、ちょうどよく近くにあるという郵便局を紹介してもらった。大柄な女性が担当者で、20キログラムをやや下回るキャリーケースは、無事、大阪心斎橋店よりつくば市へと運ばれることになった。その女性の流ちょうな関西弁はとてもやさしめで、時に笑いを含むような口調で円滑に作業を促してくれる。商業の「街」として成長したここ 大阪は、お客に対する接し方も、何処となくこなれている感がある。ここで生きてみたいと、一瞬でも思った。

 

 

 大阪城をボランティアで案内する人たちがいるようで、事務所と思える小屋を覗いてみた。そのアジトは大阪城をそばにして、プレハブ小屋として成り立っていた。中に入ると、60代前半と思しき眼鏡をかけた女性が陽気に対応してくださった。観光ですか、と聞かれ、昨日まであった大会の帰りなんです、と答えるとお疲れ様ですね~よければゆっくり観光してってくださいな、と言われた。その女性の笑顔に救われ、残り半日おおさかを楽しもうと思えた。

 

 

 もとより、「大阪」に対するイメージはあまりよくなかった。厳しい口調で上から物言いしそうな「イメージ」が僕の頭の中で先行していて、しかし、ただ単に僕自身が「メディア」に毒されてしまっているだけなんだとすぐ反省をした。ただ、そんな風な局面に出くわさなかっただけで、もしかしたら、そういった環境の場は本当にあるのかもしれないと思う。先の朝、心斎橋付近で郵便局を探していた時、飲み屋街に少々踏み込んでしまった。しまったと思いながらも、ただここを通り抜けようと必死に歩いた。前方から、黒服に身をまとった怖そうな面のお兄さんが タバコを吸いながらふらふらと歩いてきて、そのまた片手には缶ビールを持っていた。時間はまだ朝の10時であるというのに、いいや、朝だからなんだと思った。なんとか声をかけられないようにと、相手には見えているに決まっているのに、僕は息を殺すように、足早とその場を去った。